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コラム4 主人公の着衣(上巻)
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【文正夫妻は十余年経ってもいつも同じ着物】
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この挿絵の中で主要人物は、物語の始めから終わりまでほぼ同じ衣服で描かれているので見分けやすい。文正は、塩焼き長者になったところから娘婿の正体が判って驚くところまで、くすんだ青色の小袖と薄赤に赤茶の模様がある袴に折烏帽子である。娘の誕生前から嫁に行くまで十数年間あっても服装を替えないのは、主人公の目印だからである。もっとも最初の挿絵だけは烏帽子もかぶらずに縞の袴、最後では黒の束帯を着て畏まっているのが文正のようだ。天皇の外戚になって昇格したので服装も変わったらしい。
ちなみに奥方の衣装も、出産の時の白い着物以外は黄色に赤と青の花模様の表衣で最後の挿絵の前まで同じ、姉娘も薄桃色に濃紅色の亀甲模様の表衣、妹娘は白地の表衣で通している。重ねた色から模様の細部まで描かれて美しいが、すべて同じで姫君達の別のコーディネートが見られないのはちょっと残念である。 中将は、商人の姿以外は二藍の直衣で統一している。夏物の単衣なのでうっすらと赤の単衣が透けるのが美しいが、姫君と出会ったときは冬なので、いささか寒そうではある。 |
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