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コラム6 出産に関わる祈祷と呪術(第三巻)

【屏風から着衣まで総てが白で調えられた建礼門院の産室】
【皇子を寿ぎ天地四方を射る平重盛】
 出産には母子の命が懸かっている。医療技術の発達していなかった当時であれば尚更で、様々の祈祷や呪術が行われた。平家物語のこれらの場面はその好例である。

 まず、各社寺へ祈願しする一方、験力のある僧たちを呼んできて、祈祷を行う。

 出産場面の挿絵では、産婦の建礼門院の周辺のもの総てが白に統一されているのも、当時の慣習である。産所を囲むのは白い絵具のみで描かれた白絵屏風であり、建礼門院と周囲の女房たちの着重ねている衣は、総て白色のものばかりである。

 右は出産の少し後の光景で、皇子の枕頭に金銭九十九文を置き、「天を以て父とし、地を以て母と定め給え云々」と寿いだ重盛が、桑の弓に蓬の矢をつがえて天地四方を射るのは、中国に由来する慣習である。後の章で、甑を男子誕生の場合は南へ、女子は北へと家屋の棟から転がし落とすのは日本の習俗で、胎盤を体内から速やかに排出させるためという。