『一目玉鉾』は江戸時代前期に刊行された絵入り地誌である。
第一巻は北海道にはじまり奥州街道を江戸まで。巻二は江戸より東海道を進んで大井川まで。巻三は同じく東海道を金谷から大坂「天満豊崎」まで。巻四は大坂より瀬戸内海を通って長崎・壱岐・対馬に至る。加えて「此より唐国への海上/○高麗迄百四十四里」など、外国各地への里程を付す。
版面は上下段に分かれており、上段には本文、下段には地図が記されている。上段の記述は地名の他、当地を治める大名、土地の名物、遊郭、伝説などが記されている。また和歌も多く掲載され、名所和歌集の趣もそなえている。下段の地図は街道を中心とした、いわゆる道中図の形式である。街道から見た地名や名所古跡などの位置関係を示そうとするが、その一方で地形などは意識して描かれない。また街道を歩く旅人や、神社仏閣を拝む人なども描き込まれている。
作者は俳諧師・浮世草子作者であった井原西鶴である。寛永十九年(1642)大坂の生まれ。若くして俳諧を学び、はじめ貞門、のち談林派に参加した。その奇抜な句風は阿蘭陀(おらんだ)流と称された。また矢数俳諧という素早く連続して句を読み続けることを得意とし、貞享元年(1684)には住吉神社で一昼夜に一人で二万三千句を詠んだ。
天和二年(1682)、小説の第一作『好色一代男』を刊行した。好評を得て『好色一代女』『好色五人女』などの好色もの、『武道伝来記』『武家義理物語』などの武家もの、『日本永代蔵』『世間胸算用』などの町人もの、『西鶴諸国ばなし』『懐硯』などの雑話ものと、多彩なテーマを扱った小説を著し、人間の内外面の諸相を描いた。元禄六年(1693)没、五十二歳。