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コラム1 絵合(上巻)

【扇の源氏絵で、絵合を行う宮たち】
 平安時代には、左右に分かれて何かを出し合ってその優劣を競う、歌合わせや花合わせなどのような、もの合わせの遊びが流行った。紅白歌合戦もその名残であろう。絵合わせもその一つであるが、『源氏物語』「絵合」帖に書かれた藤壺中宮の御前でと冷泉帝の御前での、梅壺女御と弘徽殿女御が絵巻物を出して競い合った絵合の物語に由来するという。『源氏物語』ゆかりのこの遊びは、源氏絵の女に惚れこんでしまうような王朝好みの主人公の恋のきっかけに、いかにもふさわしい。

 もっともこの挿絵では、絵合の絵は絵巻物ではなく扇絵として描かれている。扇絵の源氏絵も、扇合わせというもの合わせもあったので、この場面が間違いとまでは言いたくないのだが、主人公が幾度も巻き返しつつ女の絵姿を眺めると書かれているので、やはり絵巻物の絵合として描いてほしかった。