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コラム7 石山寺本『源氏小鏡』挿絵と『新曲』(上巻)

【物語も『源氏』を下敷としているが・・・】
 平成21年3月、紫式部ゆかりの石山寺で、江戸時代前期の挿絵入りの『源氏小鏡』が公開されるとして、話題になった。『源氏小鏡』とは『源氏物語』五十四帖の梗概を書いたダイジェスト版であり、石山寺本はその各帖ごとに挿絵が付いた珍しいものだという。

 この挿絵が『新曲』の挿絵と似ているのである。挿絵の一部を見る限りながら、男女の顔立ち、立ち姿、築山や水際の描き方や水波の表現、霞の形、塀のぼかし方、色調まで近く、同じ流派、おそらくは同一の絵師によって描かれたものではないかと思われる。

 『新曲』の物語は、コラム2の「『源氏物語』つながり」で述べた如く、『源氏物語』の各場面を下敷として語られている。その挿絵もまた、源氏絵の各場面を基にして描かれたものであろうか、いずれ両図様を比較した上で、あらためて報告したい。