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コラム5 愛玩の罪 〜第百二十一段〜

【唯一『なぐさみ草』と異なる場面が選ばれた挿絵】
 この挿絵の中で唯一、構図の原本とする『なぐさみ草』挿絵と異なる場面が選ばれているのが第百二十一段である。主な内容は愛玩のために生き物の自由を奪って飼うことの罪についてであり、『なぐさみ草』挿絵では、籠に入れた鳥や檻に入れ鎖でつないだ小動物を見る貴族の男が描かれている。

 しかし明星大学本の挿絵は全く別の場面、冒頭の「養ひ飼ふものには馬・牛、」に基づいたと思われる、手綱を付けた馬を歩かせる仕丁たちである。文面は、これらの動物は繋ぐのはかわいそうだが無ければ困るので仕方がないと続き、生き物を飼うことの非難から除外されている部分である。

 なぜこの挿絵だけ『なぐさみ草』の図柄を使わなかったのか。この本の持主となる相手がよほどの馬好きであったのか、或いは本段で非難されるような鳥や小動物の愛好家であったのかと、想像を逞しくするばかりである。